多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

人材確保に挑む中小企業の取組み

2025年10月27日

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理容業界の価値を上げる「OTOKO DESIGN」/有限会社寿


代表取締役の三島さん(和光市駅南口店にて)

 最後に紹介するのは、「OTOKO DESIGN」というブランド名で理容業を展開する有限会社寿。埼玉県新座市と和光市に店舗を構える同社は、1982年の創業以来、長年”町の理容室”として家族で事業を行ってきた。やがて地域の高齢化に伴い客層や売上構造の変化に直面し、2008年以降、同社の2代目である代表取締役の三島裕和みしまひろかずさんを中心に、リブランディングを進め、商圏を拡大しながら新たな価値を打ち出してきた。SNSやブランドムービーを活用した情報発信、ターゲットを絞った広告配信により集客力を高め、顧客層は都心部へと広がったほか、60代以上が中心だった顧客の年齢層は、いまや9割が若年・中堅層へとシフトしている。

 三島社長が同社に入社したのは1985年で、創業者である父とともに、順調に事業を営んできた。次第に顧客の高齢化を肌で感じながら迎えた2008年のリーマンショックで、一気に経営が厳しくなった。父からは店を畳もうと持ち掛けられたものの、三島社長は店を立て直すことを決めた。

 三島社長が同社に入社したのは1985年で、創業者である父とともに、順調に事業を営んできた。次第に顧客の高齢化を肌で感じながら迎えた2008年のリーマンショックで、一気に経営が厳しくなった。父からは店を畳もうと持ち掛けられたものの、三島社長は店を立て直すことを決めた。

 まずは財務内容の管理を徹底し、給与制度を制定するなど、基本的な部分を整えた。1年ほどで経営危機を脱してからは、先代である父から経営権を引き継ぐ過程で、理美容業では加入が義務付けられていない社会保険への加入や、キャリアパスの整備などで働き続けられる環境づくりに力を入れてきた。こうした取組みにより、現在では18名の社員を抱えるまでになり、平均年齢も30歳前後と若い世代が活躍する職場となっている。

上質でプレミアムな空間を演出する新座本店の店内の様子

 社員の育成と定着にも注力し、キャリアコンサルタント資格を持つ社員との面談により、一人ひとりが将来像を描ける仕組みを構築した。また、社員はアメリカでの研修や高級ホテルでのサービス体験を通じて、世界水準の接客や空間づくりを学ぶ機会を得ることもできる。さらに、ブランド理念をまとめた「クレド」を浸透させ、組織文化を強化してきた。

 「お客様にご満足いただくことはもちろん、社員の幸せも大事。理容師の職業価値を高め、社員に喜んでもらえる会社を作り続けていきたい」と三島社長。店名でもある「OTOKO DESIGN」は、「空間・技術・接遇すべてで男の魅力を磨く」をテーマに、理容を“男をデザインする場”として再定義したものだ。単なるヘアカットに留まらない、新たな体験価値を提供する場として、唯一無二の世界観で店を作り上げている。現在、東京都内への出店計画を進めており、美容クリニックとの医療連携も含めた、これまでにない新たな店舗を構想中だ。

継続的な人材確保のために


 今回紹介した3社は、それぞれの強みを活かし、独自の取組みを通じて人材採用や定着に成功している。採用活動では、職場の雰囲気を伝える発信や柔軟な対応が効果を上げており、定着率の向上には教育体制や評価制度の整備、働きやすい環境づくりが寄与している。この先、継続的な人材確保のためには、企業の規模に関わらず、自社の特徴を活かした人材戦略が求められるだろう。

巴山建設株式会社
東京都調布市多摩川2-25-1 巴山ビル2階

株式会社美喜運輸
埼玉県入間市木蓮寺104-2

有限会社寿(OTOKO DESIGN)
埼玉県新座市片山1-9-17-102(新座本店)
埼玉県和光市本町13-2(和光市駅南口店)

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