多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

人材確保に挑む中小企業の取組み

2025年10月27日

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SNSを活用した新たな人材採用/株式会社美喜運輸


 次に紹介する運送業を営む西多摩郡瑞穂町の株式会社美喜運輸は、埼玉県入間市に事務所と車庫を持ち、チャーター便と呼ばれる特定の荷主の荷物を輸送するサービスを展開している。代表取締役の比留間文明ひるまふみあきさんは、同社の2代目として社長を務めている。33人いる社員のうち、多くはドライバーとして活躍しており、現在29台のトラックを所有し、社員ごとに担当のトラックを決めているという。同社では数年前からInstagram・TikTok・XなどのSNSに企業アカウントを作成し、今では人材採用のツールとしても活用している。

トラックの洗車を行う動画は反響があった投稿の一つだ

 SNSを担当しているのは、比留間社長の妻で、取締役を務める有希ゆきさんだ。2019年頃からInstagramを始め、その後ほかのSNSにもアカウントを開設した。投稿内容は、主にブルーの車体がトレードマークの同社のトラックを中心とした、日々の業務風景だ。トラックに乗ったドライバーの出社や帰社の様子や、帰社後の洗車風景、社員の個性にフォーカスしたものなどを、写真や動画に収めて各SNSに投稿している。再生回数が増えるにつれて、全国のトラック愛好家や学生から、「トラックを見に行きたい」「会社を訪問してみたい」といったコメントが寄せられるようになり、会社見学を受け入れるケースも増えた。その様子を再びSNSに投稿することで、さらなる反響を呼んでいる。

 このように会社や社員の実際の雰囲気がわかる投稿を続けてきたことが、人材の確保にもつながるようになった。特に高卒などの若手社員には、SNSの投稿を見たことがきっかけで入社を希望した社員も多く、これまでSNSから採用した総数は10人以上になるという。

代表取締役の比留間さん(左)と取締役の有希さん(右)

 有希さんは、「求職者が重視する会社の雰囲気は、求人サイトでは見えづらく、そこをアピールできるのがSNSの強みです。自分に合った条件で絞った後の決め手にもなっているのでは。入社後のミスマッチが減って、定着率も上がりました」と話す。

 また、同社では健康経営優良法人の取得やワークライフバランスの向上を目指した取組みも進めている。女性ドライバーの産休・育休取得はもちろん、男性社員の育休実績もあり、社員が働きやすい環境を整えている。さらに、社員のスキルアップを支援するため、大型トラックのドライバーを目指す社員には、大型免許取得に必要な費用を会社が負担する制度も導入している。

 SNSという時代を反映したツールの活用により、会社の魅力をPRし、人材確保に成功した同社。比留間社長は、「『美喜運輸で働きたい』と思ってくれる社員を大切にし、社会に貢献できる人材に育てていきたい」と語る。

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