多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

事業承継後の中小企業-新社長の奮闘記

2024年7月25日

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株式会社青梅インターフローラ
代表取締役社長 沢田宏氏

 一般企業で働いた経験から、「人の資質に依存しない環境づくり」を目指しているという沢田氏。まずは社内の定期ミーティングを見直し、勉強会を開催し、社員に振り返りの習慣が根付くよう働き掛けを行いながら、組織としてより成果を上げるため、仕事への臨み方や数字への意識づけ、顧客との関わり方への改善・強化に取り組んでいる。

 国内外のさまざまな生産者から花きを仕入れている同社。しかし、特に国産花きの生産者は高齢化が進み年々減少傾向にある。さらに人口減少による国内市場の縮小は避けては通れない。この厳しい状況に立ち向かっていくために、沢田氏は新たな花き消費の形を模索している。それは、花きを通じていかにこれまでとは違った価値を生み出すかに焦点を当てたものだ。例えば、世間にまだ流通していない商品を生産者とのタイアップによってブランディングし、売り出すことである。これにより、生産・小売・消費を含めた「四方良し」の実現を目指している。沢田氏は、「1を7や8に高める作業とあわせて、0→1をつくることで、経営基盤を強化し、教育に力を注げる環境をつくっていきたい。それができれば、あとは社員が育てていってくれる。そのための人材はそろっている」と話す。

下請け企業からの脱却へ/多摩岡産業株式会社


多摩岡産業株式会社
代表取締役 岡陽平氏

 次に紹介するのは多摩岡産業株式会社だ。社員数は36人で、工業用部品や医療用品、商業用ディスプレイなど、プラスチック加工品の製造を行っている。代表取締役の岡陽平おかようへい氏は、同社に入社後現場でのものづくりや営業を担当して経験を積み、5年前に3代目として自身の父から事業を継いだ。

 入社前はオーストラリアで働いていたという岡氏。同社には幼い頃から出入りし、学生時代には友人とアルバイトするなど馴染みのある場所であったが、入社してからは今まで見えていなかった面が見えてきた。昔ながらの町工場だった同社では、社内体制は整備されているとは言えず、社員同士の意思疎通も円滑ではなく、社内改革に早急に取り組む必要があった。創業当初から大手企業の下請けを中心に事業を営んできた同社。時代とともにどんどん変化していく大手企業に合わせたアップデートは必要不可欠でもあった。

 事業承継後、岡氏は社外から講師を呼び込むことにした。東京都の補助金を活用し継続的に研修プログラムを行ううちに少しずつ社員の意識が変わり始め、徐々に風通しの良い職場環境が構築されていった。それにより優秀な人材が集まるという相乗効果が生まれたという。

 次に取り組んだのは、仕事の幅を広げることだ。人材が集まったことにより、自分たちで一から開発・設計に取り組むことが可能となった。自社製品の製造にも挑み、それがきっかけで大手メーカーのOEMの受注につながったこともある。現在はマッチングや商談会への積極的な参加、他企業の会社訪問や工場見学、経営者同士の情報交換などを通して、ステップアップを図っている最中だ。また、近年は従来の専門領域のみの発注ではなく、製造工程を一貫対応できる企業に仕事を依頼する取引先も増えているという。同社でも今後は製造業の中で幅を広げることで、より多くの受注確保を目指していく。

府中市住吉町にある多摩岡産業住吉工場の外観

 同社が現在力を入れているのは、農業機械の部品製造だ。先代までは農業分野は全く取引がなかったが、岡氏が事業承継してから築いたネットワークの中で信頼を積み重ね、大きな受注につながっているという。

 岡氏は、「加工業から一歩進んだ業態に少しずつシフトしてきている。今後は農業機械の部品を納めている関西方面の営業所開設を目指して、さらなる人材の確保に力を入れていきたい」と語る。

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