多摩けいざい
特集 多摩のうごきを知る
事業承継後の中小企業-新社長の奮闘記
2024年7月25日
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企業にとって事業承継への取組みは、会社存続のために避けては通れない道である。事業承継後の新社長は、さまざまな課題を抱えながらも、自社のさらなる発展を目指して日々奮闘している。今回は、承継後数年が経った企業3社にインタビューを行った。
中小企業における事業承継
近年、中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、事業承継への取組みは経営者にとって大きな関心ごとの一つとなっている。後継者の不在による廃業も増加している中で、前任者が築いてきた会社や、社会を支える貴重な技術、また従業員の雇用を守るためにも円滑な事業承継は経営者にとって重要な課題である。当金庫の中小企業に対する調査では、調査時点で既に後継者が決まっている企業の事業承継先として最も多いのは自身の子供であり、78.5%と大半を占めていた(図1)。
図1 後継者が決まっている中小企業における事業承継の引継ぎ先
(出典)多摩けいざい第106号事業承継後の新社長には、社内体制の整備や古くからの取引先との信頼関係の構築など、取り組むべき事柄が多く待ち受ける。また、新社長として時代の変化に対応したビジネスモデルの策定や新たな取引先の開拓など、さらなる成長に向けた活動も行わなければならない。中小企業庁の調査によると、同業平均値と比較した事業承継実施企業の当期純利益成長率は約20%高いというデータがあり※1、事業承継は企業を成長させる1つの契機となっているとも言える。実際に事業承継を行った企業では、承継後にどのような取組みを行っているのだろうか。
※1 中小企業庁「2021年版 中小企業白書」より
新たなビジネススキームの構築へ/株式会社青梅インターフローラ
まず紹介するのは、花き卸売業を営む株式会社青梅インターフローラだ。同社の主な事業は、生産者から仕入れた花きを自社の卸売市場でのせりを通じて仲卸業者や小売店に販売することである。16人いる社員のうち14人が営業担当として、生産者と販売者をつないでいる。代表取締役社長の沢田宏氏は同社の3代目として、自身の祖父、父親に続いて社長に就任し、3年目を迎えた。元々は沢田氏の兄が承継する予定だったため、大学卒業後は会社員として働いていたが、一転して自身が承継する流れとなり、およそ10年前に同社に入社した。
せりを行う青梅インターフローラのオークションルーム入社後、しばらくは営業担当として現場で汗を流し、経営企画室長を経て2022年に代表者となった。社長就任後にまず取り組んだのは、社員の意識改革である。これまで日々の業務を繰り返しこなすだけの状態が当たり前となり、社員の成長に上手くつなげることができていなかった。これではいい人材が入ってきても育たない、と沢田氏は社長就任前から危機感を感じていた。