多摩けいざい
特集 多摩のうごきを知る
連携から生まれる中小企業のイノベーション
2024年4月25日
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先端分野を追求するための産学連携/システム・インスツルメンツ株式会社
最後は八王子市のシステム・インスツルメンツ株式会社だ。理科学機器を中心に、医療・健康・バイオ・環境の4つの分野に関わる製品の製造を行っている。先端バイオ関連装置や窒素ガス発生装置、介護予防機器など、分野はさまざまであるが、いずれの製品にも創業以来培ってきた分析の手法が活かされている。
代表取締役社長の濱田和幸氏によると、同社では濱田氏が代表に就任したおよそ30年前から産学連携に取り組んできたという。先代の頃はエンジニアとして自らが研究開発を行う立場であった濱田氏。当時、同社に限らず研究開発に携わる企業では、研究装置の部品一つであっても自前で作ることが主流だったため、本来の業務以外の作業に多くの時間と人手が割かれていた。しかし、先端分野の研究開発はスピード勝負でもあり、全てを一から作っている間に他社に先を越されてしまっては本末転倒だ。また、時代とともに働き方改革や人材不足が進んでおり、昔のように時間と人手を割くことも難しい。
これまで共同研究や共同開発により東京農工大学、筑波大学、神戸大学などと30件近くの産学連携の実績を持ち、現在も6,7件が進行中だ。中には、がんなどの疾患を新技術により早期発見できる装置の開発といった、社会貢献に直結する事業も含まれている。
産学連携に取り組み始めた頃は、連携相手との関係構築に苦労したり、研究が上手くいかなかったりしたこともあったという。それでもその分上手くいった時の喜びはひとしおで、やりがいも大きい。濱田氏は、社員にこうした成功体験をたくさん積んで、モチベーションアップにつなげてほしいと考えている。
日々進化し続ける先端分野で複数の研究開発に携わる同社では、その分野に関するものだけではなく、社会の最新の動向や情報を積極的に取り入れることが欠かせない。そのため、研修や勉強会など社員の人材育成には力を入れている。また、社内ではデジタル化を早くから進めており、一昔前とは働き方が大きく異なるというが、時代の変化として受け入れ柔軟に対応してきた濱田氏。
「今は多様性の時代。この先も新たなアイデアを生み出し、最新の技術を提供していくために、連携するかしないかに関わらず、分野や業種を超えて、さまざまな人と関わっていきたい」と話す。
中小企業のさらなる成長に向けて
今回インタビューを行った3社では、外部機関との連携に取り組み始めたきっかけはさまざまであるが、連携することによって市場に新たな価値を生み出し、会社のさらなる成長につなげていた。
高度な技術力を有しながら、経営資源やノウハウが限られていることで、自社単独で製品開発や新たな市場の開拓を行うことが難しい中小企業は多く存在している。多摩地域の中小企業においても、外部機関との連携が活性化することで、さらなるイノベーションの創出が期待される。(畑山若菜/編集:野村智子)