多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

多摩地域におけるふるさと納税の動向

2023年1月25日

ページ 1/3

2008年にふるさと納税制度が創設されて以来、各自治体における寄附金の受入件数と金額は伸び続けている。ふるさと納税の広がりが様々な効果を生み出している一方で、自治体からは課題も指摘されている。今回の特集では、多摩地域におけるふるさと納税の現状にスポットを当てる。

ふるさと納税の歩み


 納税を通じ、全国の自治体に寄附という形で貢献できる制度である「ふるさと納税」。生まれ育った地域や応援したい地域など、納税者が自ら寄附先と寄附金の使い道を選ぶことができる。ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄附を行うと、寄附額の2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される仕組みだ。控除を受けるには確定申告を行う必要があるが、2015年より一定の条件を満たせば確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」が始まり、近年はオンライン申請を取り入れている自治体も多い。加えて全額控除されるふるさと納税枠が約2倍に拡充されたことも後押しとなって、同年以降寄附額は大きく増え、2021年は8,302億円と過去最高となった(図1)。

 自治体に直接寄附金を届ける制度であるふるさと納税は、自治体側にとっても寄附金の受入による財源の確保、返礼品の提供による地域や地元産業の活性化など、メリットが多い。実際に、地方では新たな雇用の創出が進んだり、災害時には被災地支援や復興への貢献など様々な効果を上げてきた。

 一方で、ふるさと納税による寄附が増えるにつれて、自治体間では返礼品競争が過熱し、制度の対象から除外される自治体も出る事態となっている。また、一部の自治体で問題となっているのが、本来納められるはずであった住民税の大幅な減収である。特に、都市部では地方に比べてふるさと納税による寄附が少なく、受入額よりも流出額が大幅に上回っている自治体が多い。流出額が多くなると、自治体が十分な行政サービスを提供するのに支障が出る可能性もある。そのため、原則としてふるさと納税による減収の75%分が普通交付税を通じて国から補填される仕組みとなっている。しかし、自治体の財政力を図る数値である財政力指数が一定値を超えた自治体(不交付団体)では、補填は一切行われず、流出した分がそのまま自治体の収支に計上される。

図1 ふるさと納税寄附受入額及び受入件数の推移

(出所)総務省「各自治体のふるさと納税受入額及び受入件数」より当研究所作成