多摩けいざい
特集 多摩のうごきを知る
持続可能な地域づくりに向けた檜原村の挑戦
2021年10月25日
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じゃがいも焼酎で村の魅力を発信する「ひのはらファクトリー」
村の雇用の創出に向けたもう一つの取組みが、「檜原村じゃがいも焼酎等製造事業基本計画」である。檜原村は、傾斜地が多く水はけがよいことや気候が涼しいことからじゃがいも栽培に適しており、じゃがいもは村の特産品としてPRされている。村では2003年から村内での焼酎造りを実現する機会をうかがってきたが、2019年に国家戦略特区の焼酎特区として認められたことで、ついに村内での焼酎造りが可能となった。同年、「檜原村じゃがいも焼酎等製造事業基本計画」を策定し、今年7月に「ひのはらファクトリー」がオープンした。
運営を担うのは、指定管理者である株式会社ウッドボックス。焼酎造りの責任者である杜氏を務めるのは、代表取締役の吉田光世氏である。同社では、以前より檜原村の企業誘致制度を利用して、村内でヒノキのエッセンシャルオイル等を製造・販売していた。事業が軌道に乗り始めた頃、村でじゃがいも焼酎造りの担い手を探していることを知った吉田氏は、村の計画に感銘を受け、新事業への参入を決意。運営委託先として手を挙げた。ひのはらファクトリーの運営は指定管理ではあるものの、村から施設の運営委託費をもらわず、焼酎の販売による利益によって運営していく計画である。とはいえ、焼酎のみで事業を黒字化させるのは難しいと判断し、自社の看板商品であるエッセンシャルオイルも併せて販売することで、安定した売上の獲得を目指している。
同社が製造するじゃがいも焼酎は、村にとって”外貨”を稼ぐ貴重な手段となることが期待されている。村外に製品を販売して得たお金が、地域内で循環することによって村の経済の活性化につながっていくのである。また、村外で製品を売るためには、村の魅力を高めていくことも求められる。自身も檜原村に移住した吉田氏は、「地域の皆さんと一緒になって村を盛り上げていきたいです。ひのはらファクトリーを成功させて、当社を受け入れてくれた村に恩返しがしたい」と全力でこの事業に臨む構えだ。来年2月に予定しているじゃがいも焼酎の完成に向け、PRにも余念がない。同社の挑戦は、まだ始まったばかりである。
次世代へつながる村を目指して
昨今の檜原村を取り巻く現状は、少子高齢化や、それに伴う人口減少など厳しいものであることに間違いはない。檜原村における地域活性化を実現するためには、雇用の創出を切り離して考えることはできないだろう。今回のインタビューでは、村と一体となり産業を振興させ、村全体に活気をもたらそうと奮闘する事業者たちの強い想いが印象に残った。自分たちの村のために熱意を持って取り組むその姿からは、次の世代へとつながる村の未来を垣間見た。(畑山若菜/編集:野村智子)