多摩けいざい
お客さま景気動向インタビュー
株式会社高島ビル・From One's Heart株式会社・GEN HOSTEL株式会社
代表取締役 髙島優氏
2020年1月27日
ページ 1/1
髙島氏が代表取締役を務める3つの会社は、それぞれ立川駅南口の不動産管理、「立川ワシントンホテル」の経営、武蔵小金井駅のホステル「Wild Cherry Blossom」の経営を行っている。中でもホステル事業は、2019年12月にオープンしたばかりであり、今後需要の高まりが見込まれるインバウンド市場の開拓を狙っている。
代表取締役 髙島優氏当社について
私は20歳代後半まで保険会社に勤めており、その後父が社長を務めていた高島ビルに入社しました。私が35歳のとき父が急逝し、会社を継ぐことになりました。当時は、立川駅南口の区画整理事業が進んでいた時期であり、開発に関する様々な提案を受ける中で、現在の立川ワシントンホテルを建設し、2005年にオープンさせました。当時は右も左もわからない中でのホテル業への参入でしたが、事業は順調に進んでいます。
ワシントンホテルは、ビジネスマンがゆったりと過ごせる上質な部屋作りがキーコンセプトであり、ビジネスホテルの中では、「ミドルアッパーゾーン」という位置づけになります。開業当時は、ホテル評論家から良い評価をいただくなど、他のホテルとの差別化が図れました。しかし、その後似たようなホテルが急増し、市場は供給過多になっていきました。
新たなホステルを武蔵小金井にオープン
次の時代にこの会社をどう発展させていこうかと思案する中でインバウンドに目を付け、ここ5年ほど新しい店舗を探していました。そのような中で、武蔵小金井駅近くの土地を落札し、2019年12月に多摩地域初の「ホステル」をオープンさせました。名称は「Wild Cherry Blossom」です。当ホステルでは、「地域密着型」をコンセプトとしており、多摩地域の人や自然、歴史、文化などを直に体験してもらうことを通じて、地域活性化につなげていきたいという想いを持って運営しています。
当ホステルの主なお客様は、欧米やムスリム圏からの旅行客です。激しい競争に足を踏み入れることになるので、東アジア圏からの需要はあえて狙っていません。ホステルの市場はまだ小さく、成熟していないため、ニーズが盛り上がってくるまでは、ある程度の時間がかかると見込んでいます。「ブルーオーシャン」であるホステル事業に参入し、我々が市場を育てていくという発想で取り組んでいます。
「Wild Cherry Blossom」の外観イメージ業界の動向について
オリンピックに向けて一時的に需要が盛り上がると思いますが、その後のマーケットは、どうなっていくかはわかりません。しかし、オリンピック後も、武蔵野の森総合スポーツプラザや府中市郷土の森など、近隣施設でスポーツや音楽などのイベントが多く開催される予定となっており、意外なところに需要はあると思っています。
働き方改革について
ワシントンホテルでは、2011年の東日本大震災後にお客さまが減少し、このままでは会社が潰れるかもしれないと危機感を覚えました。これをきっかけに、それまでの仕事を大幅に見直し、従業員の働き方改革を進めました。例えば、営業や会議、上司への報告、宿泊価格の細かな調整などを全て廃止したほか、正社員とアルバイトの同一労働同一賃金化も進めました。その結果、現在では従業員一人あたりの残業時間は月約2時間、有給取得率100%を達成しており、人材の定着率も上がっています。このような仕組みは、ホテル業界の中でも先進的なのものと思っています。
ワシントンホテルでのノウハウを活用し、小金井のホステルではさらに組織のフラット化を推し進めました。ホテルでは、お客様が従業員にヒエラルキーを求めますが、ホステルでは、フレンドリーさが求められます。このあたりの違いを就業規則にも反映させています。
従業員のうち外国人は6名おり、採用は観光専門の外国人人材紹介企業で募集を行っています。その他、学生アルバイトも15名ほど採用しています。学生はTOEIC750点以上を採用の条件としていますが、英語を使って仕事がしてみたいというニーズを持った学生から多くの応募がありました。優秀な学生アルバイトを獲得できるのは、多摩地域の優位性であると思います。ただし、ホテル業の清掃の仕事は、髪の毛一本でもクレームになるため、部屋を隅々まで磨き上げなければならないなど、かなりの重労働を伴います。ですので、企業としても学生に何らかのメリットを与えられなければ、人材も集まりません。当社の場合、英語力を仕事の場で試せるということが、採用に繋がっていると思います。
人材戦略として今後考えなければならないのは、従業員のキャリアアップについてです。組織のフラット化を進めると、従業員のキャリアアップを図るのは難しくなります。この点は当社の課題です。
「Wild Cherry Brossom」の客室今後の事業展開
小金井のホステルでは、小金井市の魅力を掘り起こして発信していくことで地域振興につなげていきたいという想いがあります。今後、小金井市商工会と一緒に市内の事業者の方を対象にインバウンドのセミナーを開催するなど、地域との連携を強めていく予定です。
また、事業の横展開もしていきたいと思っています。小金井だけでなく、多摩地域の他のエリアにもネットワークをつなげていき、地域全体を活性化させていきたいと思っています。住宅需要が頭打ちになる中で、今後駅前の商業地で物件が取得できるところが出てくるかもしれません。そういった物件のリノベーションに活路があると見ています。
私としては、「23区にお金を取られたくない」という想いがあります。様々な企画を地域主体で考え実行することで、地域の中にお金を落とし、雇用も生み出していきたいと考えています。今後は、観光が多摩地域の雇用を支える重要な産業のひとつになると思っており、法律上の制限の問題なども含めて、どのような事業ができるか研究を続けています。
(インタビュー日時: 2019年12月23日)
株式会社高島ビル・From One's Heart株式会社・GEN HOSTEL株式会社
代表取締役: 髙島 優
本社所在地: 東京都立川市柴崎町2-1-10 高島ビル
業種: 不動産賃貸業、宿泊業