多摩けいざい
統計レポート
多摩地域における待機児童の現状
2018年10月25日
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待機児童問題の解消に向けた取組みの経緯
2001年に当時の小泉首相が待機児童ゼロ作戦を打ち出してから、これまでに様々な取組みが行われています。2013年には待機児童解消加速化プランによる40万人分の受け皿整備が決定され、2年後の2015年には整備目標が50万人に引き上げられました。2016年には匿名ブログの影響もあり、企業主導型保育事業の実施や処遇改善、潜在保育士の活用、保育士試験の年2回実施などといった保育士不足対策が打ち出されており、政府主導での取組みが行われています。
このような取組みが行われる一方で、待機児童問題の解消が進まない理由の一つに、将来の乳幼児人口の減少が想定され、保育所等の整備が進まないことが挙げられます。多摩地域における5歳未満の人口推移をみてみると、直近では横ばい傾向ですが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、徐々に減少傾向になると見込まれています(図表6)。そのため、保育所等を増設することに財源を使うことをためらう自治体は少なくないでしょう。
また、保育士不足も大きな要因として挙げられます。資格を持っていながら、保育園などの保育に関係した職場に就業していない潜在保育士の活用や、保育士試験の年2回実施など対応策が検討されていますが、保育士の賃金向上や勤務体系など処遇を改善しなければ、保育士不足の解消は難しいでしょう。
図表 6 多摩地域における5歳未満人口の推移
新たな取組みと今後
八王子市は2018年4月1日に八王子市役所庁舎内に「八王子市立市役所内保育園」を開園しました。市庁舎内への小規模保育施設の設置は多摩地域では初の試みです。このような取組みをはじめ、施設整備に取り組んだ結果、八王子市では昨年4月1日時点で107人であった待機児童を56人へと約半分にしました。図表5をみても、申込者数に対し、2018年4月1日時点での待機児童数は相対的に少ないことがわかります。こういった先進的な取組みを通して、さらに待機児童問題が解消されることが期待されます。
人手不足が叫ばれ、女性活躍が求められている中、安心して働くことができる環境を整備するために、待機児童問題の解消やそのための保育士不足の解消など保育を取り巻く課題の解決に向けた取組みが望まれます。