多摩けいざい
統計レポート
多摩地域における待機児童の現状
2018年10月25日
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「保育園落ちた日本死ね」という匿名のブログが発端となり、国会でも取り沙汰された待機児童問題は、政府や自治体、市民団体など様々な立場から、解消に向けた取組みが行われています。しかし、2018年4月1日時点での多摩地域における待機児童は、2,060人と依然として多い現状があります。今回は、待機児童問題に焦点を当て、多摩地域における保育の現状について特集します。
待機児童の現状
先日発表された2018年4月1日時点での待機児童数は、全国で19,895人となっており、前年比で6,186人の減少となりました。これまで増加傾向にありましたが、ここで大幅に減少したことがわかります(図表1左)。また、多摩地域における待機児童も、2,060人と前年比861人減少しました(図表1右)。近年、3,000人前後で推移していましたが、全国と同様にここで大きく減少し、3分の2程度となりました。今年度公表された待機児童数は、従来自治体の判断に任されていた育児休業中の保護者について、保育所等に入所できたときの復職意思が確認できた場合は待機児童に含めるなど、2018年3月31日に改正された保育所等利用待機児童数調査要領の待機児童の定義の変更が適用されています。それでも、待機児童数が減少した背景には、2017年から2018年にかけて、保育所等の定員数が2,703,355名から2,800,579名へと前年比3.6%増加した一方で、利用児童数は、2,546,669名から2,614,405名へと前年比2.7%の増加に留まったことが影響していると考えられます(図表2)。しかし、都道府県や自治体によっては、利用者数の伸びに対し十分な定員が用意できなかった自治体もあり、全体としては待機児童数が減少しましたが、待機児童問題が解消されたとは言い難い現状があります。
図表 1 全国および多摩地域における待機児童数の推移(各年4月1日)
(出典)厚生労働省発表(2018年9月7日)『(参考)申込者の状況(平成30年4月1日)』、多摩地域:東京都『都内の保育サービスの状況について』よりたましん地域経済研究所作成図表 2 全国における保育所等定員数および利用児童数の推移
多摩地域全体における待機児童数をみてみると、全国で最も多い東京都の待機児童の約40%を占めています。他の都道府県と比較しても、待機児童率※は全国で2番目に高いことがわかります(図表3)。一方で、6県(青森県、富山県、石川県、山梨県、岐阜県、鳥取県)では、待機児童数0となっています。
続いて、多摩地域の市町村に目を向けてみましょう(図表4)。待機児童の数でみると、府中市、国分寺市、三鷹市と主に東部で待機児童が多く、3市で多摩地域全体の約30%を占めています。また、2018年4月1日時点の待機児童数を申込者数で割った待機児童率をみてみると、やはり東側のエリアで高くなっています。前年の待機児童数を比較してみると、府中市、調布市、日野市では、前年比100人以上減少していますが、依然として3市とも100名以上の待機児童を抱えています。しかし、マンション開発などにより急激に保育需要が増加した市町村もあることや、共働き世帯の割合も自治体によって差があり、保育需要が異なることなど様々な要因があり、一概に待機児童問題の解消に向けた自治体の取組みを評価することはできないということにこの問題の難しさがあります。
図表 3 都道府県別待機児童数
図表 4 多摩地域市町村別待機児童数
待機児童数と申込者数の分布を表したのが図表5です。都道府県別にみると、沖縄県や兵庫県と同じように多摩地域は、申込者数に対する待機児童が多いということがわかります。続いて、多摩地域の市町村別にみてみると、福生市、檜原村、奥多摩町では、待機児童率0%となっています。
図表 5 全国および多摩地域における待機児童数と申込者数の分布
(出典)厚生労働省発表(2018年9月7日)『(参考)申込者の状況(平成30年4月1日)』よりたましん地域経済研究所作成※ 本レポートでは、待機児童率を「待機児童数÷申込者数」と定義しています。