多摩けいざい

多摩のうごきを知る

持続可能な地域づくりに向けた檜原村の挑戦

ひのはらファクトリー

吉田光世よしだみつよ氏(株式会社ウッドボックス 代表取締役)

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ひのはらファクトリーの館内には同社のヒノキ製品が並ぶ

ひのはらファクトリーの運営を担うまでの経緯ついて教えてください。

 村で事業を始めてから、次第に村の人と情報交換する機会も増えていきました。そのような場の中で、以前から特産品のじゃがいもを使った焼酎の工場を村内に建設する計画があることは、耳にしていました。ある時、村が運営先を探していると知った私は、「もしかしてこれは、当社に舞い込んだチャンスなのかもしれない」と考え、100ページ以上ある分厚い計画書に目を通してみました。驚いたのは、村が長い期間非常に熱意を持ってこの計画に取り組んでいることでした。読めば読むほど、魅力的に感じました。当社にとっては大きな挑戦ではありましたが、このチャンスを逃すまいと参入を決意し、プレゼンテーションによる選考等を経て正式に運営先となることが決まりました。

 それからは、酒造免許の取得手続きに奔走しました。また、焼酎造りの責任者である杜氏となるため、東京都青ヶ島村に焼酎造りの研修に行かせてもらうなど、着々と準備を進めました。そして、村の当初の構想から実に20年ほどたった今年7月、ついに焼酎造りの設備を備えたひのはらファクトリーがオープンしました。

ひのはらファクトリーの運営形態や施設の概要について教えてください。

 この施設は村が建てたもので、当社は指定管理者として運営を委託されています。当社が負担しているのは光熱費や人件費などの諸経費のみで、家賃は払っていません。また、この施設における売上も全て当社のものとなります。その分、運営委託費などはもらっておらず、当社が自力で運営を行っていくことになります。村は施設の運営者を探していた一方で、私は会社を継続していくために、当社を象徴するような話題性のある店舗が必要だと考えていました。村と当社の求めるものが一致していたからこそ、このような方法による運営が実現できたのだと思います。じゃがいも焼酎だけでなく当社のヒノキ製品の売上を合わせることで、数年かけて利益を出す計画を立てています。

 ひのはらファクトリーでは、ほかにも村の特産物を使った軽食の提供なども行っており、訪れた方に村の魅力をアピールできるような場所にしたいと考えています。いずれは、当社の持つノウハウを使ったものづくり創業支援の場としても活用していきたいです。

今後の事業展開について教えてください。

 まずはひのはらファクトリーにおける焼酎造りを軌道に乗せて、檜原村を盛り上げていきたいです。お世話になっている檜原村に恩返しができるよう、この事業を絶対に成功させたいと強く思っています。村で事業を行う立場として、村の魅力を外に広めると同時に、さらに高めていきたいと常に考えています。そして、村が今後も発展を続けていけるよう次の世代や後の人たちにつなげていきたいです。そのために、講演の依頼や中学生の職場体験受け入れなど、できることは何でも積極的にやっています。私は、檜原村はきっとこれからも大丈夫だ、もっと発展していけると確信しています。私にとって、それくらいここは魅力的で素敵な場所なんです。

 当社は、創業時から一貫して、ものづくり企業として歩んでいきたいという想いを持ち続けています。それはこれからも変わりません。私が幼少期に感じた、自分が作ったもので誰かが喜んでくれるということ、これがものづくりの原点だと思います。ものづくりで得たお金で会社が回っていくことが当社にとって理想であり、一番幸せなことです。そのため貧乏暇なしといったところですが、やりがいは非常にあります。今後も創業者から引き継いだマインドを継承し、ものづくり企業として成長を続けていきたいです。

檜原村のヒノキを使用したエッセンシャルオイル(左)とヒノキが香る人気のマスクケース(右)

(インタビュー: 2021年9月17日)

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