多摩けいざい
多摩のうごきを知る
高尾山観光の現在と未来
高尾山商店会
会長 松村高雄氏
商店会の概要について教えてください。
当商店会は昭和10年頃に設立され、現在高尾山の麓から山頂までの計49店舗が加入しています。加入店舗は土産物店や飲食店が多数を占めています。何世代にもわたって家族で経営している昔からの店が多いのが特徴です。とはいえ、各店舗では時代ごとのニーズを捉え、それに応じた形で変化を続けるなど、経営努力を重ねています。また世代交代の際は、店を継ぐ前に一度社会に出て経験を積んだ跡取りが、そこで得たものを経営に活かしている姿がみられます。そういった各店舗における努力が、当商店会の繁栄や発展にもつながっていると思います。
前会長の退任をきっかけに、数年前に副会長だった私が後を継ぐ形で会長に就任しました。私は、山頂から一段下がった場所にある「やまびこ茶屋」という飲食店を経営しています。この場所で生まれ育ち、小学校へは毎日山を下りて通っていました。
新型コロナウイルスの影響について教えてください。
昨年流行が始まってから、バスツアーをはじめとした団体客が激減しました。それによって、特に土産物店が大きな打撃を受けています。飲食店についても、以前と比べると客足はおよそ4~5割の減少となっています。店に入らず外で食事を済ます人が増えたため、現在も客足は思うように戻っていません。今のところ店を畳んだ事業者はいませんが、今後もこの状況が続けば廃業する店舗が出てもおかしくはありません。
そのような中でも、昨年の夏には「夏の高尾山“清涼”体感めぐり」と題して、高尾山名物の一つであるそばの割引キャンペーンなどを行いました。このイベントは、東京観光財団の「地域資源発掘型実証プログラム事業」に採択され補助金をいただいて開催しました。もちろん、商店会のどの店も当初から感染対策には十分に気を遣って営業しています。
高尾山はメディアに取り上げてもらう機会が多くあります。テレビ番組の収録などで有名人が訪れると大きな宣伝効果があります。一方で、新型コロナウイルスの流行以降はネガティブな報道も多く、時には実際とは大きく異なる情報を流され、残念な思いをしたこともあります。メディアが与える印象は強烈で、良くも悪くも大きな影響力を持っています。マスコミ対応には今まで以上に気を遣っています。
ここは昔ながらの地域で、今までは多少問題が起きても、内部で解決できることがほとんどでした。ですが、近年は台風19号による被害や今回のような危機的状況に見舞われることが続いており、周囲との協力体制が今まで以上に求められるようになりました。現在は、八王子観光コンベンション協会や八王子市とも一緒に活動を行うことも増えてきています。
今後の観光事業の方向性について考えをお聞かせください。
新型コロナウイルスが収束した後の私たちの生活がどのようになっているのか、まだあまり想像がつかず、収束後に向けた対策が取りづらいのが現状です。今まで通りの施策では通用しないのではないか、という不安もあります。そのような状況ではありますが、今後高尾山地域では初の試みとなる大規模なマーケティング調査が予定されており、商店会としても非常に期待を寄せています。高尾山は初めて訪れるお客様が圧倒的に多い観光地です。この調査によって新たなニーズを捉え、再び多くの方に訪れてもらうために、商店会としても前向きな変化を遂げていきたいと思っています。
商店会では高尾山の清掃活動やゴミの持ち帰り運動に長い間積極的に取り組んできました。きれいな山を保ったことが、結果的にはミシュラン三つ星の獲得にも繋がりました。今後もこの環境を守るために地域一丸となって活動していきたいと思います。そして自然豊かな高尾山にはまだまだ知られていない魅力がたくさんあります。今後は新緑と紅葉の季節だけではない、どの季節でも楽しめる観光地として広く周知していきたいです。高尾山はミシュラン三つ星認定されていることや、山頂から富士山が見えることなどから外国人観光客にも人気があります。多い時には私が見た感じでは登山者の3分の1以上が外国人観光客で占められていました。新型コロナウイルス収束後のインバウンド再開が待ち望まれますが、今は情報発信などできることを継続して行っていきたいです。
(インタビュー: 2021年7月6日)