多摩けいざい

多摩のうごきを知る

高尾山観光の現在と未来

高尾登山電鉄株式会社

代表取締役社長 船江栄次ふなええいじ氏 常務取締役 堀内徹ほりうちとおる

ページ 2/2

ケーブルカーとリフトの乗り場

貴社の観光事業への取組みを教えてください。

 2007年4月のミシュラン簡易版ガイド、続く2009年3月の同社グリーンガイド・ジャポンで「わざわざ旅行する価値がある」観光地として三つ星を獲得後、登山ブームもあり、高尾山を訪れる方は一気に増加しました。コロナ前のピーク時の観光客数は年間およそ300万人ともいわれています。高尾山の資源は、特徴ある豊かな自然と都心からのアクセスが良い利便性の高さが両立していること、歴史ある薬王院の存在、京王電鉄高尾山口駅、そして当社が運営するケーブルカーやリフトといったインフラが充実していることなどがあります。高尾山の人気を一時のブームで終わらせないために、今後も引き続き地元の商店会や関係者、八王子市などとも協力しながら、これらの資源をどのように活用すべきかを話し合い、主体性を持って積極的にPRしていくことが必要であると認識しています。

 そのような取組みの先駆けとして、当社では社員全員が「高尾山コンシェルジュ」になろうと呼びかけています。全社員がその日の高尾山の様子を把握し、タイムリーな情報や魅力を訪れた方に伝えられるようになるのが理想です。その一環としてインバウンドに対応するため、当社では地域の大学との産学連携によって英会話講師を派遣していただき、社員が英語でスムーズなご案内ができるようにレッスンを受けているところでした。3年目を迎え、ケーブルカーでの車内アナウンス、きっぷ売り場での対応、さる園・野草園での説明等、内容も徐々にレベルアップし、社員のモチベーションも高まっていた最中に新型コロナウイルスの流行によって、連携事業は残念ながら中断してしまいました。状況が落ち着いたらタイミングを見計らって、ぜひまた再開したいと思っています。

堀内徹氏

今後の展望について教えてください。

 現在の高尾山は、新緑と紅葉のシーズンにお客様が集中している状態です。今後は繁閑差の平準化にも取り組んでいかなければいけません。その一環として、時間帯をずらした早朝登山のニーズにも対応していきたいと考えています。時間帯を変えて登山することでまた新しい高尾山の魅力を発見してもらえると思います。例えば、冷温帯と暖温帯の境界にある高尾山には1600種類もの植物が自生するほか、約5000種類の昆虫やヤマメなども生息しており、なおかつ四季折々の豊かな自然がありますので、どの季節でもその時期ならではの楽しみ方ができると思います。

 当社のケーブルカーが開業した昭和2年当時の新聞記事には、「まことに適当な市外公園とも言い得る地で清冷なる大気、闊達なる眺望はどんなにか都会生活者の慰安、保健の糧となる事であろう」とあります。今年は、当社にとって創立100年という節目の年です。これからも安心安全をモットーにより多くのお客様にご利用いただき、今後も50年、100年と続いていけるよう、使命感をもって未来に向かって進んでいきたいと思います。高尾山は昔から人々にとって心身の健康保持の一端を担う場でもありました。新型コロナウイルスの流行が続いていますが、原点回帰の意味も込めて、まずはマイクロツーリズムとして近隣地域の方々に訪れていただければと思います。京王高尾山温泉や高尾599ミュージアム、宿泊施設の「タカオネ」もありますので、山の清澄な空気でリフレッシュして、さらにそれらの観光施設や各商店をご利用いただき、高尾山を満喫していただけると嬉しいですね。そして、近いうちに日本各地のお客様、次にインバウンドのお客様と、段階を踏んで賑わいが戻ることを願い、日々努力を重ねて行きたいと思います。


(インタビュー: 2021年7月6日)

『多摩けいざい』トップへ戻る