多摩けいざい
特集 多摩のうごきを知る
ヤクルト中央研究所に迫る
インタビュー全文
2019年10月25日
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続いて、研究所で行われている具体的な研究内容についてお伺いします。宮﨑さんはどのような研究をされているのでしょうか。
宮﨑氏 私のチームでは、乳酸菌の新しい機能性に関する研究を行っています。私は、以前そのチームリーダーとして研究全体のマネジメントを行っていました。当社の乳酸菌研究は、代田博士の時代から90年近くの歴史がありますが、驚くべきことに実はここ数年の間に乳酸菌の持つ新しい機能が明らかになってきています。私たちの仕事は、その新しい乳酸菌の機能を明らかにして、それを商品にしていくことです。基礎研究か応用研究かと言われたら、ちょうどその間に当たる研究と言えるかもしれません。
乳酸菌の新しい機能とは、どのような機能なのでしょうか。
宮﨑氏 一つ目は、アレルギー症状を軽減する機能、二つ目は、ストレスを緩和したり、睡眠の質を上げたりする機能です。 アレルギー症状軽減機能については、そのような機能を持つ新しい乳酸菌を発見しました。一方、ストレス緩和・睡眠の質向上機能については、これまでも「ヤクルト」に入っていた乳酸菌 シロタ株の新たな機能として発見しました。この研究成果を活かして、ストレス緩和・睡眠の質の向上を謳った「機能性表示食品」として、「Yakult(ヤクルト)1000」という商品を10月1日に関東一都六県で販売する予定(※現在は販売中)です。
当社では、研究のエビデンスに強いこだわりを持っています。睡眠の質向上の研究に当たっては、2年連続して延べ約100人の被験者に協力していただき、実験データを取得しています。2回ともほぼ同じ結果が出ていて、効果の再現性についても確保されています。
宮﨑さんは、これまでどのようなキャリアを送ってきたのでしょうか。
宮﨑氏 私は、入社前は大学の研究室で微生物の研究をしていました。入社後、一番最初に配属されたのは化粧品の開発部門だったのですが、実は入社するまでヤクルトが化粧品を扱っていることすら知りませんでした。そのうえ、自分が使わないものということもあり、最初は化粧品の開発に戸惑いがありました。でも、そのうちに「あ、同じだな」と気付いたんです。実際に検査をしたり分析をしたりする上で、サンプルが何であろうと乳酸菌の研究という同じベースがあり、分野が違っても最終的には同じところに行き着きます。それがわかってからはスムーズでした。当時は、湘南化粧品工場内で化粧品の開発を行っており、私はそこに6年程いた後、国立市の現研究所に異動し、乳酸菌を使った新しい化粧品の素材の開発に11年程携わりました。それから研究管理の仕事を3年経験した後、現在の食品研究所に異動し15年程が経ちます。研究所の中には入社してからずっと同じ分野の研究をやっている人もいる中で、私は比較的幅広く色々な分野に携わってきた方だと思います。
宮﨑さんにとっての研究のモチベーションは何ですか。
宮﨑氏 社会へのインパクトというのが一つのモチベーションです。私たちの研究の目標は、その成果が商品として世の中に出ることです。販売会社やヤクルトレディさんの手を介して商品がお客様の元に届いて、喜びの声を聞けたときが一番嬉しく思います。
今後の目標について教えてください。
宮﨑氏 私も60歳を過ぎたので、自分が何か新しい発見をするというより、部下を育てていくことが目標です。ヤクルト中央研究所では、人を育てていくことがずっと継続して行われてきて、私も先輩たちに育ててもらった恩があります。部下たちが研究者としてレベルアップしていくために、私もそのサポートをしていきたいと思っています。
どうもありがとうございました。