多摩けいざい

特集 多摩のうごきを知る

オリンピックが多摩地域経済に与える影響

2019年1月25日

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開催期間中の宿泊者数は20%増加、宿泊者消費金額は43%増加を予想


 東京2020大会の開催期間中、多摩地域にどのような影響があるのか、各種データより推計を行いました。その結果、外国人滞在者数は現状の2倍程度に増加するものの、宿泊者数は日本人・外国人を併せて約4,000人の増加(増加率約20%)に留まるという推計結果が得られました(表1)。その要因としては、多摩地域のホテルでは、近年客室稼働率が高い水準で推移していることから、追加の宿泊者を受け入れる余地があまりないことが挙げられます。また、多摩地域の主要駅のホテルでは、大会委員会によってメディア関係者のために既に総客室数の半分程度の部屋が確保されている※1ことから、観戦を目的とする観光客の増加は抑制されるものと考えられます。

表1 東京2020大会時における多摩地域への影響

(出典)たましん地域経済研究所

 次に、宿泊者の滞在目的に着目すると、現在の多摩地域における宿泊者は、ビジネス目的での利用が多く、観光目的の利用は相対的に少ない傾向があります。しかし、東京2020大会時には、観光目的の宿泊者の割合が増加すると予想されます。一般に、観光目的の宿泊客のほうが一泊あたりの平均消費金額が高いため、観光目的の宿泊者が増加すると、多摩地域内での消費金額も増加すると考えられます。宿泊者数の増加と宿泊目的の変化が生じる結果を併せて考慮すると、多摩地域内での宿泊者一日あたり消費金額は、現在の3億2千万円から4億6千万円へと約43%増加すると推計されます。

多摩地域への経済波及効果は1,547億円


 続いて、東京2020大会が多摩地域にもたらす経済波及効果について推計を行ったところ、1,547億円の生産誘発額が生じるという結果となりました(表2)※2。また、付加価値額誘発額は、991億円となり、東京2020大会によって、多摩地域の年間域内総生産額約13兆円※3の約0.8%程度に相当する経済効果が新規に生じると考えられます。

表2 東京2020大会時における多摩地域への影響

(出典)たましん地域経済研究所

 波及効果の内訳としては、開催にかかる直接経費が1,128億円、開催に伴う多摩地域内の消費増加額が90億円、それらによって経済が拡大することによる効果が329億円となっています。

 業種別に見ると、最も大きい効果が見込まれるのは建設業であり、恒久施設や仮設の建設需要などの増加によって、667億円の生産誘発額が見込まれています。次いで、運輸業(175億円)、事業所サービス業(170億円)、飲食業(71億円)などとなっています。事業所サービス業では、特に警備業などで高い生産誘発効果が見込まれます。

(中西 英一郎)


※1 東京2020 オリンピック・パラリンピック招致委員会「立候補ファイル」より
※2 本推計では、招致決定から東京2020大会終了時までを分析対象としています。また、大会経費については、東京都の発表(2018年1月)や会計検査院の指摘(2018年10月)等で明らかにされているとおり、総額が大会組織委員会が公表している金額よりも増加すると見られています。しかし、増加経費の内訳には、大会と直接の関連が薄いものも多く含まれていること、経費の内訳が非公表であることを踏まえ、本推計においては、大会組織委員会が公表する数値を用いて推計を行っています。そのため、実際の経済波及効果よりも過小に見積もられている可能性があります。その他、東京都が算出している経済波及効果とは、その算入対象や諸条件が大きく異なるため、比較はできません。なお、本推計では、独自に作成した「2011年多摩地域産業連関表」を用いているほか、逆行列表は{I-(I-M)A}-1 型を用いています。
※3 たましん地域経済研究所「2011 年多摩地域産業連関表」より

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