多摩けいざい
特集 多摩のうごきを知る
多摩地域における民泊の動向
東京都インタビュー
2018年10月25日
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お話を伺った方:東京都産業労働局 観光部 住宅宿泊事業調整担当課長 佐藤さん、上野さん
取材日:2018年9月28日
6月15日にいわゆる「民泊新法」が施行されました。開始後から現在に至るまで、反応はいかがでしょうか。
新法が施行された6月15日前後は、毎日窓口が一杯になるほど、多くの事業者の方が届出や相談にいらっしゃいました。その後は少し落ち着きましたが、現在もコンスタントに相談や届け出をいただいている状況です。
東京都の窓口では、東京都全体のうち、区部、八王子市、町田市を除く地域を担当していますが、9月14日時点で、123件の事業者の方に民泊の届出をいただいています。
多摩地域の民泊事業者は、どのような方が多いのでしょうか。
現在、直接現地の事業者のところに一軒一軒伺って運営状況を伺っているのですが、意識が非常に高く、しっかりと適法でやっていきたいという意思を強く持っていらっしゃる事業者の方が多いと感じています。
多摩地域の場合、家主自身が宿泊者のおもてなしや対応を行っている方が多く、管理会社に委託する形態の民泊は少ない傾向があります。事業者の方ご自身が、宿泊者に「日本らしい生活を体験してもらいたい」という想いを持って、それぞれの魅力を打ち出して事業を行っている方が多いです。中には、「収益は度外視」という方もいらっしゃいます。
また、地域と向き合って事業をされているということも感じています。民泊をおこなう上で、近隣の方とコミュニケーションをしっかりとっており、中にはご近所の方が道に迷っていたお客さんを家まで連れて来てくれたという事例も聞いています。
民泊の事業者は、語学力が高い印象ですが。
はい。民泊をすでにやっていらっしゃる方というのは、語学力に加えてコミュニケーション力も高い印象を持っています。東京都では、様々な事業者の方を支援するために、民泊をされる事業者の方向けに多言語事例集を作っており、誰でも文例をコピーペーストして使えるようにしています。
事業者の方が民泊を始めるきっかけはどのようなものが多いのでしょうか。
海外の方とのコミュニケーションを図りたいという声や、民泊を行うことで地域の活性化に繋げたいという声は、非常に多いと感じます。そういった考えをお持ちの方ですので、当然ながら地域に迷惑をかけないようにしたいという意識が高いように思います。
そのほか、所有する賃貸用不動産に入居者がなかなか入らないので、民泊で回したいという声もよく伺いますが、一方で、民泊の収益面に不安を感じる声についてもよく伺います。実際のところ、そういった方が民泊か賃貸かを選ぶとしたら、結果としては賃貸を選択する方が多いように感じます。
初期投資については、家主居住型でやる人はあまりお金をかけない印象です。不在型では、消防の関係で必要となる設備の設置費用などをかけていると思います。
どのような宿泊者が実際に民泊を利用されているのでしょうか。
宿泊者は海外の方が多いですが、日本の方もかなり利用しています。利用目的としては、観光が多いのですが、日本にいる家族や友人に会いに来るといったケースも多いようです。ビジネスで利用する方もいます。
エリアごとの利用状況の違いはあまり見られません。新法の施行前は、もっと東部エリアに宿泊者が集中するのかなと思っていたのですが、実際はそういったことはありませんでした。海外の方は、エリアの違いをあまり考慮していないようです。それよりも個々の事業者の魅力で引っ張られているという印象があり、きちんとおもてなしをしてくれる方に宿泊者が集まっています。良いおもてなしを受けた方がその後リピーターになったり、友人に紹介したり、仲介サイトのレビューに書いたりすることによって、次の宿泊に繋がっているようです。
今後、オリンピック・パラリンピックなど様々な国際的なイベントが控えていると思いますが、最後に将来を見据えて一言お願いいたします。
我々の一つの思いとして、闇雲に民泊を増やしていくのではなく、信頼できる質の高い民泊を増やしていきたいと思っています。既に届出をされている事業者の方は、健全な民泊を広めていくためのパートナーです。ダメと言わなければならないときはダメと言える、健全な関係を作っていきたいと思います。
どうもありがとうございました。
(インタビュアー:中西 英一郎)