多摩けいざい
特集 多摩のうごきを知る
多摩地域における民泊の動向
八王子市インタビュー
2018年10月31日
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お話を伺った方:八王子市保健所 生活衛生課 環境衛生担当 主査 鈴木正行さん、森嘉之さん
取材日:2018年9月27日
八王子市では、多摩地域の30市町村の中で唯一、民泊に関する独自の条例を定めています。条例制定の経緯を教えてください。
八王子市では、「八王子市住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」という名称の条例を定めていますが、「住民を守る」ということを主眼に置いた条例になっています。新法施行前に行われていた民泊において、全国的に一番苦情が多く近隣トラブルになっていたのが、ゴミ出しや騒音でした。市で行った「市政モニター」の結果でも、そういった懸念が多く挙げられていたことから、市民の平穏な生活環境の悪化を防止するという点に特に力を入れてルール化することを目的に、本条例を制定しました。
ただし、それほど厳格に民泊事業を制限する条例にはしていません。法律上、営業区域と期間については、自治体が独自のルールを設けて制限できるようになっています。しかし、八王子市では、民泊新法施行前に住民からの苦情相談がそれほど多くなかったということもあり、制限するための合理的理由が見当たらないということで、営業区域と期間の規制は盛り込まなかったという経緯があります。
「それほど多くなかった」ということは、少しは苦情があったということでしょうか。
はい、何件かはありました。例えば、外国人の方が無届で民泊をやっていて、夜中でも電気が煌々としているとか、マンションに見知らぬ人が出入りしているとか、そういったものはありました。
ただ、現在は法律が施行されたことによって、民泊事業者の実態は大きく改善されていると思います。
八王子市が条例で上乗せした部分というのは、どういった点でしょうか。
八王子市の条例においては、民泊の事業者に対して、周辺地域の住民への周知、廃棄物の適正処理、周辺地域の生活環境の悪化防止などについて義務付けております。また、違反した場合は市が指導、勧告できるようになっており、これに従わない場合は、事業者の氏名等を公表する規定になっています。
6月15日に民泊新法がスタートしてから、反応はいかがでしょうか。
住民側の反応としては、落ち着いています。届出されている事業者への苦情は、現状ほとんどありません。一方、事業者側の反応としては、申請手続きが煩雑という声が多く挙げられています。国が作成したWEB上で申請できるシステムもあるのですが、使い方が難しく、あまり使われていないという現状があります。また、八王子市の場合、法律上定められている提出書類の他に、条例による上乗せの提出書類もあります。その他、民泊の申請を行う際に、保健所、消防署などの多くの窓口に行かねばならないといったこともあり、「手続きが面倒だ。」という方も中にはいらっしゃいます。
民泊の申請をされる方は、どのような方が多いのでしょうか。
現在のところ、八王子では全部で11件(9月末現在)の届出を受理していますが、事業者の方の属性は様々です。年齢層も幅広いのが特徴です。法人の申請は今のところありません。また、八王子市の場合、家主居住型が9件と、全体の大半を占めています。
民泊を始められる動機としては、空いている部屋を活用するためといった理由が多いですが、外国の方に日本の文化を体験してもらいたいという思いで民泊を始められる方もいらっしゃいます。
民泊に対する期待や課題についてお聞かせください。
民泊には、空き家などの遊休資産の有効活用や宿泊者との交流の場となることが期待されますので、民泊事業者には、安全で衛生的な宿泊施設を提供するように努めていただきたいと思っております。
また、条例制定の経緯でもお話ししたとおり、住民の生活環境を守っていく必要がありますので、民泊事業者に対し、継続して指導を行っていきたいと考えております。
どうもありがとうございました。
(インタビュアー:中西 英一郎)