多摩けいざい
特集 国文研の魅力に迫る!
2018年7月25日
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国文学研究資料館ってどんなところ?
立川市緑町にある国文学研究資料館(通称、国文研(こくぶんけん))は、2008年3月に品川区より移転し、10周年を迎えました。国内外に存在する日本の古典籍を中心とした文学関連の資料を収集し、様々な分野の研究者へ提供するとともに、それに基づく先進的な共同研究を推進する総合研究機関です。創立以来40年以上にわたって培ってきた資料研究の蓄積を活かし、国内外の研究機関・研究者と連携しています。さらに、古典籍を豊かな知的資源として活用し、文学だけでなく、ジャンルを横断した研究の創出にも取り組んでいます。
また、最近では地域に根差した取組みにも力を入れています。そのひとつとして、「多摩地域の歴史アーカイブズ(古文書)を読む」※1 と題した講座を開催しました。多摩地域にまつわる古文書をとりあげ、文学関係の典籍とはひと味違った『くずし字』を解読しながら、地域の資料と歴史についてわかりやすく解き明かしました。
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「古典籍は『くずし字』で書かれているため、読みづらいかもしれませんが、絵が描かれているものも多く存在します。絵から多くの方に興味を持っていただき、国文研の展示や『くずし字』講座、イベントなどにもいらしていただけたら嬉しいです」と語るのは、研究部准教授の恋田氏。
幼い頃から、よくお寺めぐりをしていた恋田氏は、自然と古典の世界にも関心を抱くようになり、大学では国文学を専攻しました。源氏物語のような雅な世界より、当時の庶民の様子を生き生きと語る中世の説話などに興味を持ったと言います。
「室町時代というと戦乱の絶えない不幸な時代というイメージを持たれがちです。一方で、想像力あふれる豊かな物語が数多く作られ、貴族や武士はもちろん、庶民にまで親しまれていました。現代のような情報通信手段がなかったのにも関わらず、なぜか各地に似たような話が残っています。物語の内容だけでなく、その物語がどのような時代背景から生み出され、どのようにして人々に伝わってきたのかということに強い関心を持って研究しています。」
たとえば、富士山の洞窟内に広がる地獄や極楽を探検する室町物語『富士の人穴(ひとあな)草子』は、当時の富士山への信仰から繰り返し書き写され、印刷され続けました。 国文研所蔵の絵入り本(写真3参照)には、当時の人々が思い描いた地獄の様子が色鮮やかに描写されています。古典籍を通して、当時の人々の想像した異界にふれてみるのも面白いかもしれません。
※1 2018年5月10日~7月5日まで全8回の講座を開催しました。現在は終了しています。